2月の生け花・エッセイ

【花器】 備前焼き水盤・剣山
【花材】 エビデンドラン・雪柳
【生け方の解説】

薄い水盤です。剣山を置く位置により花の高さや動きも変わります。

今回は雪柳を低く生けて、エビデンドランのまわりに動きをつけてみました。
花の作品ばかりにとらわれず、後ろの風景にもあうバランスが必要です。>
【エッセイ 第五十六話】

立春も過ぎましたが、まだまだ寒い日が続く京都です。昔から京の底冷えと言われますように、比叡山から吹き下ろされる比叡おろしと呼ばれる風が凍みいります。

さて以前にお話ししていましたように、今年はスタジオをとびだして生け花の作品を撮っていきます。その最初になります今回は、知り合いの京町屋の縁側での撮影となりました。

私の事務所があります中京区は京都の中心地で、たくさんの商家や旅館があります。以前はその多くは木造の町屋造りでしたが、近年はマンションも増え、また新築の京町屋は災害予防の為から鉄筋造りになっているようです。

そんななか今回撮影におじゃましました町屋は、昔からある古き良き京町屋です。町屋の詳しい紹介はまたの機会にさせて頂きますが、さすがに昔の建物の持つ空気感とでも言うのでしょうか、ただ縁側に花器を置いただけでも絵になる雰囲気でした。

なるほど京都の町で人気のあるショップはイタリアンレストランであれ、アクセサリー店であれ、さらにさらに服屋さん、美容院、おしゃれなオフィスまで!こぞって町屋に出店する訳がその空気感にあるのかもしれないなと言うのが少し解ってきました。

京都に長く住んでいます私は、かえってその空気感の持つ新しさというか特別感に慣れっこになっていたようです。縁側の廊下の板一枚、時が刻んだ古びた傷さえもが骨董の花瓶敷のように見えてきます。今回は生け花をとおして、またカメラのファインダー越しに見ることにより今までとは違う感性が働いたのか・・・いやいや今までがあまりにもボンヤリ見ていたのかも知れません。

ただ新たな町屋を発見した気分になったことは確かな気がしますので、今後ますます撮ってみたくなりました。


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