4月の生け花・エッセイ




【花材】
てっせん、オクラレルカ、スノーボール、オンシジューム

【制作意図】
花市場では早くも菖蒲なども出初めています。少し季節の先取りで、てっせんを主役に生けました。後方に新緑を思わすオクラレルカやスノーボールを配置し、てっせんを浮き上がらせる見せ方をしました。 水盤の生け花はオクラレルカをなびかせて、早くも涼やかに表現してみました。


【今月のエッセイ】
早くも4月です。今年の京都の桜は朝夜の気温差のせいでしょうか、例年より長く咲いている気がします。観光のお客様も多い京都ですので、あちらこちらでライトアップされ夜桜を楽しめます。
ただ何処も少し照明が明る過ぎないかしらとも思います。もちろん美しく華やかに見えるのですが、少し時代をタイムスリップして電気の無い時代の、例えば篝火の明るさ程度で見た方が、風情があるように思うからです。ともあれ桜の下は人々でいっぱいの京都ですが。

さて明るさの話し繋がりですが、先日いつものBar で飲んでいた時、建築家の方と照明の話しになりました。住宅建築の方で明かりは重要なポイントだそうです。採光の良い明るい住まいが今の住宅には求められ、また大手のハウスメーカーなどもそれを売りにしている感はあります。その建築家の方に実は私は暗い家が好きだと言いましたら興味を持たれました。 私が育った家は現代的な採光の良い家でしたが、祖父の古い日本家屋は昼間でも暗い家でした。祖父の家は近所に有りましたので、子供時分はいつも遊びに行っていました。長い廊下や仏間にはいつも静けさが漂っていました。
今思いますと子供の私は何か怖いもの見たさのような好奇心で、その暗い廊下や座敷に佇んでいたのでしょう。可笑しな子供ですよね。でも、そこで見る絵本や図鑑はなぜか楽しく、また集中できた思い出があります。また、暗い部屋の中から見る日の当たった中庭の美しさが子供である私にも印象的だったと思えます。

陰影礼賛、その言葉を知ったのはもちろん大人になってからです。幼い自分のなかに暗い中で静かに暮らすと言う、日本文化の始まりのような感覚があったとは思えません。ただ何故か、妙に落ち着けたのは確かです。そんな話しで建築家の方と盛り上った訳です。

もちろんそのBar の明るさは完璧なまでに薄暗いお店でした。                          



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