2025年12月の生け花・エッセイ




【花材】

白樺・ポインセチア・松ぼっくり・ブルーアイス・泰山木の葉・さつま杉・バーゼリア


【制作意図】

今月の作品はクリスマスのウィンドディスプレイ風に設えました。白樺の木をバックに森の中でサンタが一休みしている。そんなイメージで制作しました。誰もが一目で「あらクリスマスね」と笑顔になってくださると嬉しいです。


【今月のエッセイ】

■おさ兄ちゃん

父の絵画展も無事にお開きとなりました。後片付けも終わり、実家で久しぶりに幼い頃のアルバムを見ています。と言いますのは、実家の建替えの話しがあがったからです。まだ決定はしていませんが、私の育った家ですので懐かしい写真を見たくなりました。昭和35年クリスマスの写真。小さな家の狭いリビング。モミの木のクリスマスツリーにキャンドルが灯ったケーキ。横に座る坊っちゃん。そう私です。けっして裕福では無い家庭でしたが、父母はお洒落な人でちゃんとクリスマス飾りをしていました。小さな革靴をプレゼントしてもらい、ピカピカの靴も写っています。

ページをめくると一番好きな写真がありました。小さな家の縁側に座る私。庭には持っていた玩具がきれいに並べてあります。飛行機・自動車・ロボット・機関車など。満面の笑顔の私の隣に、いとこの修(おさむ)兄さんが面白いポーズで写っています。その当時流行っていたテレビのコメディードラマで「番頭はんと丁稚どん」。それに出演されていた大村崑さんのマネをして、メガネをずらしておどけています。玩具いっぱいに笑顔、じゃなくて修兄さんのポーズに大笑いしていたと思います。

その修兄さんが先日急に亡くなりました。突然に腹部動脈瘤をおこし、あっという間にこの世を去りました。叔父の家がすぐ近くだったので、いとこの兄弟は私と妹をとても可愛がってくれました。特に三男の修兄さんは8歳上で、ちょうど幼い私にとって素敵な兄さんでした。小学生から大学生になる間、ずっと親しくしてもらいました。ひょうきんで気さくな兄さんでしたので、いつも楽しい話しで盛り上がりました。

妹も可愛がってもらい、修兄さんの呼び方も「おさむにいさん」から「おさにいちゃん」へとなったのも仲良くしてもらったからだと思います。大人になってからも会うと、子供時分にかえったように「おさにいちゃん、久しぶりやね~」と。全然会っていない期間を感じる事もなく、昨日の続きで話せる「おさにいちゃん」でした。歳を重ねお互い老年期になった今年の春に、一緒に食事をしたのが最期になりました。もちろんその時も、いつものように気楽にお喋りをして『次に会う時は今日の続きね』

正直とても寂しいです。幾つになっても、いつ会っても不自然で無く、素の人柄で素敵な兄さん。けっして格好つける事なく、ひょうきんな姿。たくさんの影響を受け、楽しく生きるコツも教えてくださいました。

「ありがとうね。おさにいちゃん」


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