11月の生け花・エッセイ


【花材】ななかまど・糸菊
【制作意図】
ななかまどの紅葉の葉を葉枝の湾曲に沿って丸い形に整えました。黄色の糸菊を中心に一輪すっと立ててみました。
錦秋のなかの菊の花。 秋の定番の花材ですが、菊一輪に穏やかな秋を祈りました。
【今月のエッセイ】

紅葉の季節がやって来ました。京都の街は紅葉の名所が多く11月に入りますと一気に車の量が増えます。最近は高速道路のインター近くの駐車場を使ってのパークアンドライドを自冶体も薦めていますが、まだインフラ整備が追いついていないのと、認知されていないのか例年混雑しております。 他府県ナンバーの車をたくさん見かけますと、いよいよ紅葉シーズンだと感じるのも風情の無い話しですね。

さてそうは言いますものの、秋は大好きな季節です。お花も夏の暑さを乗り越えてそれこそ風情ある姿になります。木物や実の物もたくさん生けますが枝葉に季節の移ろいを感じます。

先日、新潟県より真っ赤に紅葉しました「ななかまど」を仕入れました。「ななかまど」と言う名前は7回火にくべても燃え尽きないほど堅い木からきています。それはそれは見事な紅葉で生け甲斐のある木でした。ふと若かかりし頃、生花店で修行中の事を思い出しました。亡くなられて随分経ちますが先々代の花屋の大将の事を思い出した次第です。当時、大将は70歳を越えられた位だったと思います。現役は退いて会長職についておられましたが、たまにお得意様宅へ生け花に行かれてました。そのお供をよくさせて頂き大将の花生けを見せてもらい、その豪快さに驚きました。当時私も生け花を勉強するようになって、枝振りや枝の流れ、また枝葉のつき方などに気がいくようになっていました。大将の生け花はそんな細かい事は気にされず、花や木を豪快に、それこそどばっーと素早く生けられました。

さて仕入れました「ななかまど」を生ける時、大将のその所作を思い出し私も一気に細かい事は気にせずに、えいっ!やぁ!と生けてみました。さすがにまだまだ大将の域には及びませんが、思った以上に上手く生けられた気がします。なんというか自然のなかにある木の姿に近づいた感じです。姿だけでなく木の命の力もあるように思いました。

今思いますと当時の大将の姿は木や花と同じ自然と一体化した人の姿だったと感じました。
まだまだ私には修行が足りないと思い、当時その姿を見せて頂いた事に感謝する秋の日でした。




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