2023年10月の生け花・エッセイ

(1作目)




【花材】

梅モドキ・胡蝶蘭・ピンポンマム・オンシジューム


【制作意図】

モダンに秋を表現したく、蘭の花と梅モドキの取り合わせを考えました。
花は季節感が大切ですが、生ける私の気持ちも秋にシフトする事が大切だと思います。


【今月のエッセイ】

ようやく秋らしい気候になりました。大学の後期講義も始まり、清々しい気持ちで秋の花を生けています。それにしても今年の暑さはずいぶん長引きました。やっと訪れてくれた京都の秋を楽しむ観光のお客様で、どの観光地も早速賑わいを見せているようです。ここ最近の私の日課、ウォーキングのことは前回にもお話ししました。トレーニングとして歩く時はいつものコースで、一番の目的は歩く事、それだけに集中しています。それはそれで日々楽しく、心地よい運動量とやりきった感に満足しています。が、最近いつものコースに飽きてきたなとふと思うことがあり、時間の余裕があるときに少し歩くコースに変化をつけてみようと思つきました。

京都に暮らしていますと、案外観光地を歩く事は少ないです。仕事で行く先々が京都の有名観光地の近辺と言う事もあり、近場を車で通りすぎるだけで行かなくとも人の多さが想像できます。なので普段は仕事以外で近づく事はほとんどありません。そこで、ちょっと考えまして夜のウォーキングならば人も少なくてゆっくり散歩できるのでは?とチャレンジしてみました。仕事終わりの夜8時くらいから祇園の八坂神社から清水寺までの道を歩いてみました。トレーニングの歩き方ではなくて、風景を見ながらの散歩ペースです。

京都に生まれ京都で育った私ですので、その道は子供の頃そして学生時代には歩いて観光した覚えはあります。その後の数十年、その界隈の事はテレビ・雑誌の京都特集などでちらっと見ただけです。実際久しぶりの夜の京都観光はとても新鮮で、驚きの風景でもありました。舗装し整えられたとても綺麗な道と、新しく出来たまわりのホテルや飲食店などの建物の調和の上手な事。
少し意地悪な言い方になりますが、まるで映画のセットのようでした。街の明かりの色まで計算されているようで、写真に収めると今のケータイの性能の良さも手伝いとても良い写真になります。元々はそこには、もっと人々の日常があった道だったと思います。ですがきっと古い町家の住人も減り、そこへ綺麗に京都らしい風情のある店へとリノベーションされた飲食店、そして大きく立派なホテル。それは観光都市の発展としては正解なのかも知れません。

ただ、京都高台寺の近くに今も住まう友人は、古き良き時代の終わりを嘆いていました。知っているはずの景色の、昔の面影を思い出すことも出来ないくらい整然とした街並みを歩き、何となくその気持ちが少しわかるような気がしました。




(2作目)

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