2024年3月の生け花・エッセイ

(1作目)




【花材】

(1作目)ミニカトレア・コデマリ・ミスカンサス・スカビオサ・タバリアファン
(2作目)木瓜・ミニカトレア


【制作意図】

最近あまり見なくなったミニカトレア。私には昭和なイメージのある花です。華やかな花ですので他の花材を草花っぽい取り合わせにし小さなブーケスタイルで生けました。
2作目の白いミニカトレアと木瓜は、小さくても存在感があります。骨董の器に活けると、昭和の床の間が似合いそうな雰囲気です。


【今月のエッセイ】

暖かかった2月に比べますと、また冬が戻って来たような3月の始まりです。とは言え花市場のラインナップはすっかり春めいていて、カラフルで鮮やかな花々で溢れています。もう長いキャリアですので当たり前のように、まだ寒いこの時期から桜や雪柳を仕入れ活けていますが、本来の旬はもう少し後です。季節の先取り感をお客様に楽しんでいただく為に、毎年どんどん一足早い季節の訪れをお届けしてきました。

季節を先取りした花材を選ぶ理由の一つは、やはり次の季節がやって来るお知らせの意味があると思います。もう一つの理由は、活けてからの花持ちが良い事です。本当の旬になりますと、自然の摂理ですぐに花が咲き、散るまでの時間も早くなってしまいます。花屋さんで修行した頃からお客様に長く楽しんで頂くために、季節の先取りが良いと思っていました。が、昨今はそのことに少しだけ疑問を持つようになりました。なぜなのかな?と自分なりに分析してみますと、簡単な話しでした。私が歳を取ったと言う事でしょう。

おかけ様で元気に仕事を続けられていますが、やはり心の何処かに人生の刹那でしょうか?人生の儚さでしょうか? 限られた時を過ごす事に重きを置く考え方をするようになって来たのでしょうね。何も焦って季節を先取りしなくても、必ずやって来るんですもの。そんな風に思う私です。けっしてネガティブになっているわけではなく、今この時をより楽しむスタイルに、気持ちが変わっていってるんですね。そんな思いが花選びにも現れているのだと思います。

いつものウォーキングコースに京都御苑の森があります。今の時季の大きな木を見るのが好きです。葉が全部落ち枝だけの大きな木。イチョウやブナの木、ケヤキなど。空を見上げると美しい枝ぶりが青空に映えます。暖かくなってきたらすぐに新芽が伸び、一雨ごとに葉を大きくし、あっという間にワサワサと新緑で覆われていきます。今の時季にだけ見る事の出来る木々の力強い枝ぶりや伸びる美しいライン。そんな今ならではの冬の枝の姿にも、まさに旬の命!と心躍る私です。



(2作目)

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