10月の生け花・エッセイ

【花器】 釣り蝋燭立て
【花材】 ネリネ・シキミア・木イチゴの葉・ドウダンツツジの紅葉
【生け方の解説】

事務所の窓から秋の空を眺めていました。私の事務所のまわりにもまだ京町屋がたくさん残っていて屋根瓦が美しく、それをバックに窓に釣り花を生けてみました。
花器に見立てましたのは骨董の蝋燭立てです。銅製でなかなか良い雰囲気を持っています。
【エッセイ 第六十四話】

今年は本当に暑い夏だったので、秋らしくなったこの頃は気持ちも穏やかになり、ゆっくりと秋の風情を満喫したくなります。が、私は例年よりもたくさんのご婚礼装花の予約を承っており、猛スピードで走りまわる秋になりそうです。

忙しい仕事に追われながらもいつも気に留めます事は、自分の好きな花の仕事ができることの有難さでしょうか。まわりの人に支えられて、またお客様のご支援ご贔屓にはいつも感謝の気持ちを忘れずに精進していかなくてはと思います。

また忙しい時だからこそ、今までも何度となく自分に問いかけてきた「花を生ける」という言葉の真理の探究もしたくなります。おそらく忙しい時こそ、初心に戻って丁寧な花生けをしなくてはと思うからでしょうか。以前のエッセイにも書いたかと思うのですが・・・出来上がった作品より、生けていく過程の花に向き合う気持ちに「生ける」という所作があり、その真摯な気持ちが大切なのではないかと思います。

少し歳を重ねて今の私は「花を生ける」は「花を見とどける」までが「生ける」という所作なんだと思いました。生けあがった花が、時とともに花が咲き満開になり、萎れて朽ちていく姿のすべてを見とどけることも「生ける」ということなんだと思い、また一層「花を生ける」に魅了される私です。
いや、ほんとうに好きな仕事なんです。

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