11月の生け花・エッセイ







【花材】
うめもどき ・ ダリア ・ けいとう(ボンベイ) ・ アストランティア ・  ピンポン菊・
ゴールドスティック ・ シキミア(グリーン) ・ ヒペリカム

【制作意図】
秋の花材で絵を描くように生けてみました。主役はうめもどきの赤い実です。構成を整えるよりは私の秋を感じる気持ちを優先して制作してみました。



【今月のエッセイ】

秋らしいお天気が続く京都です。

毎年年末に催されます歌舞伎の「吉例顔見世興行」が早くも一日より京都南座で開演しました。南座の耐震工事が終わり新しくなった舞台での上演です。

工事期間が長かったので上演を心待ちにしていた方も多いと思います。いつもは師走が恒例でしたので、少し気忙しく感じる私です。

いずれにしても秋は紅葉も美しい京都ですから、何処も人がいっぱいになるだろうなぁと思いながら南座の前を通り仕事に向かいました。

また秋は華道の展覧会も多い時季です。花材も豊富ですから各流派の花会があちこちで催されまさしく街が華やぎます。

私も先月、久しぶりに生け花のデモンストレーションをさせて頂きました。京都大学医学部を卒業なされた方々の同窓会のイベントのひとつで、煎茶のお茶席もあり、その煎茶道の先生のお誘いで参加させて頂きました。

50周年記念の同窓会ですから、だいたい70歳中間くらいのお医者様関係の方々です。その皆様の前で花を生けるのですからとても緊張します。

私は流派の華道家でもありませんし、どんな花を生けるのかしら?と思われながらご覧になると考えますと益々緊張感が増して来ました。

事前の打ち合わせでお茶の先生から「いつもの岸さんの調子で気楽に」と言われていましたので、本番ではいつも大学の授業で学生達の前で生けるのと同じように、気取らず自然体を心掛けて生けてみました。

実は私の実家は京都大学北門の近くです。隣に叔父の家がありまして、私が子供の頃は学生下宿をしていました。家の2階には当時7~8人の京都大学の学生さんが下宿していたのを覚えています。

当時は学生さん達もざっくばらんで、よく小学生の私とキャッチボールなどをして遊んでくれました。また、分からない宿題なども教わったりしていました。

そして当時は学生運動の盛んな頃で警察の機動隊と学生デモの衝突などもよく見たものです。花を生けながらそんな思い出話をしましたところ急に親近感が湧き、私も、そして皆様の緊張感も解れました。

ちょうど年齢がその当時にぴったりだったようで、笑顔で私の思い出話を聞いてくださりました。リラックスしてきた私は本当に自然体で自分と花の出会いや、花を生けることの拘りや想いなどを話す事ができたと思います。

出来上がった作品だけでなく、私の子供時分からの成長と、花と共に大人になった過程なども見て頂いた感じです。

皆様の感想のお言葉の中に「あなたの花には哲学がありますね」と言って頂いた事を嬉しく思いながら後片付けをしました。

今回の生け花デモンストレーションは、自分のなかにある「花を生ける」の過程を見直す機会にもなりました。

お誘いくださいましたお茶の先生、そしてご高覧頂いた皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございました。








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