9月の生け花・エッセイ



【花材】
百合、ケイトウ、ニューサイラン(ブラウン)、トウガラシ(ブラックパール)、バーゼリア、ユーカリ、木イチゴ
【制作意図】

濃い赤色の百合は珍しいです。
秋の始まりをテーマに生けました。
黒トウガラシを入れると作品がぐっと締まります。
ニューサイランの葉をくるりとして空間を持たせて完成しました。

【今月のエッセイ】

9月になり秋の花が花市場に並ぶようになりました。昨日もススキを仕入れ玄関に生けますと、いっきに秋の訪れを感じます。花の仕事をしていて一番ありがたいのは、やはり季節の訪れを感じられることですね。最近はとても良くできた造花もあります。私も依頼されディスプレイやインテリアフラワーとして飾りますが、やはり生花の持つ当季感は格別だと思います。


先日あるタイポグラフィーの先生と対談しました。その先生も花に興味を持たれていて、テーマは『「花を生ける」とは?』がメインです。花の生命感や季節感が人の手によって表現される生け花…その花をテーマに次の作品を考えられていました。花の世界に40年もいる私ですが、私も未だに日々、自問自答するテーマです。ですからすぐに答えは出ず、私のキャリアを話しながら一緒に「花を生ける」を考えてみました。

その先生はとても聞き上手な方で、私も話すことに熱が入ります。花屋の修行中での出来事や、私が「生ける」という事を常々考えながらも、歳と共に変化する「生ける」意味合いなど。あっという間に2時間近く語ってしました。


そして先日。その先生の作品展を見てきました。作品は真っ白い一冊の帳面に文字が描かれています。手に取って見ることのできる作品で、ページをめくりながら文字を見ていきます。カーボン用紙を使われているようで、ページを触りますと、触った跡形が微かに残ります。きっと展示期間中にたくさんの方の手に触れることになるでしょう。それは作品が時を経て劣化していく姿。

生け花で例えるなら時を経て枯れていく姿。私が夢中になって「花を生ける」を語った時に、先生は「生けるとは枯れるを知る」を感じとられたようです。
経年劣化は衰えていく姿かも知れませんが、その枯れる姿にも美しさがあると思わせる先生の作品でした。花と同じだなぁ。と思った私です。

そして先生も「花を生ける」事を始められたそうです。



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