10月の生け花・エッセイ

【花器】 焼き物壺
【花材】 梅もどき・秋明菊・木いちご
【小さな口の花器に生ける】

今回使用した焼き物の器は、特にこの季節には風情があります。形も落ち着いて静かな感じなので秋にはよく合うと思います。

ただ生け口が小さいので、生けるときには少しコツがいります。花器のボリュームともバランスを取りたいので、枝物の梅もどきの少しあばれた枝振りを使ってちょっとしたテクニックをお教えしたいと思います。

まず、梅もどきの枝が立つように自然と投げ入れてみます。枝の重いところがくるりと下へ回り、木が止まりたいところでそのうち留まります。

それに逆らわずに枝振りをさばくと、また木のバランスが変わりくるりくるりと回ってしまいますが、あくまでも木にまかせ止まったところから始めるほうが、ゆるりと自然な形に入り面白いです。

このような生け口の小さな花器だと花や木が立ち姿になりやすいのですが、あえて枝の流れを見せるように生けてあげると、花器のどっしりとした感じもより強調され良いです。

次は花(今回は秋明菊)を入れる前に、少し葉物(今回は木いちごの葉)で口元の隙間をうめます。

最後に花を入れて仕上げるわけですから口元を葉でいっぱいにはせず、あらかじめ花のための隙間が出来るように、口元を少ししめる感じで入れるようにします。

秋明菊はその隙間に丁寧にさしこんでいくと自然な形で花が留まります。最後に枝と花が絡まっていないか、また、茎と茎の交差がうるさくないかに注意を払い、小さな口から大きく広がりをみせるように全体を整えて完成です。
エッセイ 第二十八話 【物作りと生け花】

10月の末、私の事務所の近くに和小物のセレクトショップ「京都屋」がオープンします。

そのワンブースで私の作った小さな生け花を展示販売することになりました。京都をイメージした小さな生け花を造花で表現するという新しい試みに挑戦してみました。

もちろん今までにも店舗ディスプレイや生花を使えない現場(例えばミュージアムなど)での造花の生け花の経験はありました。しかし今回の作品は、小さな空間に季節感と和のテイストを表現し、なおかつ生花のような生命感も持たせようとする少し難しい制作でした。

造花で生け花をする時は、花を生ける(この場合生花)こととは根本的に違う作業と考え方が必要です。

もちろん造花と生花では素材が全く別物。当たり前のことなのですが、水が必要でなく、また形も自分の思う枝ぶりや花の向きに整えやすいものです。だから自分の頭の中で自然の花姿を想像したものがそのまま作品に出てしまいます。


今回小さい作品を数多く作る過程で「何かが足りない」とふと考え込み、制作が一時止まってしまいました。見た目では生け花らしく仕上がるのですが、自分が思った風情が表現できない・・・実のところまだまだ今も試行錯誤の途中だなと感じています。


ひとつ思うには、花らしさの生命感を表現するには「物を作る」という作業ではなく「生花を生ける」と言う気持ちの入れ方を加えれば、その作品を見た方により自然を感じていただけるのではないかしらと思います。たいそうな言い方になりますが、造花という素材に命を吹き込むことが出来れば・・・そういう思いが込められればと奮闘しているところです。





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