3月の生け花・エッセイ

【花器】 アンティーク鉄器
【花材】 百合咲きチューリップ(黄色・ピンク・白)・カーネーション・小手毬(こでまり)
【生け方の解説】

百合咲きのチューリップの茎の自然な曲がりを使いデザインしてみました。

茎の面白さを強調するため、葉は全部取り除きました。花器の口元に生けたカーネーションも、あえてひとつひとつの花として見せずマッスにして造形的な表現としました。

全てが作為的な花になるのを緩和させるため、自然な姿の小手毬(こでまり)を一枝そえてあります。茎の面白さ、横から見た姿でよくわかるのではないでしょうか。
【エッセイ 第三十三話】

いよいよ春の訪れですが今年は寒さがまだまだ厳しく、京都もいまだに雪のちらつく日々です。春の催事のひとつとして、私の花会を2月に催しました。各種の椿を集め、それぞれの美しさ・個性を引き出しながら生けるという贅沢な花会でした。

いつもの京町屋をお借りしての花会なのですが、花を生けること、そしてその生けあがった作品を飾るということ、その両方が私の花の表現です。今回は飾ることの面白さや難しさを考えてみました。花に限らず作品の展示は、ただそこに置けばよいというものではなく、やはり緩急のつけ方や、見せ場の出し方にそのおもしろさがあると思います。

私も美術館や博物館に出かけていき、展示物はもちろん、その配置や照明にも目を凝らし確認していきます。そこで思うのですが、空間におけるものの配置は花を生けるバランスの取り方に似ているところがあります。という事は花会の出来上がった作品を飾る時は、作品ひとつひとつをその町屋にまた生けてゆく作業のようなものかもしれません。

言ってることがちょっとややこしいですね。とどのつまり私はいつも花を生けることに結び付けてしまうようです。しかし花だけにスポットを当てるのではなく、花器と空間、そしてそれを見る人までも頭の中でコーディネートしていくのは楽しいことです。出来上がった空間の中に一輪の椿が浮かぶ姿を私は花会で目指していたと思います。


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