2025年6月の生け花・エッセイ





【花材】

けむり草(スモークツリー)、トルコキキョウ(ピンク)、リンドウ、ドウダンツツジ


【制作意図】

この季節ならではのスモークツリー。毎年楽しみな花材。今回はフワッとした中から咲き出るトルコキキョウをかわいらしく生けました。


【今月のエッセイ】

■92歳の父

6月になり御池通り沿いにずらりと、色とりどりの紫陽花が美しく咲きだしました。これから梅雨の季節に入りますが、雨を喜んでいるかの様にさらにぐんぐんと大きく咲き誇っていく姿は見事で、毎年の楽しみです。

春の終わり頃から父が体調を崩しました。御年92歳ですが今まで大病なども無く、また認知症の気配も無く元気そのものの父でした。毎日水泳に行き、油絵を描く日々。そして全国各地へのスケッチ旅行。まさしくスーパー92歳です。でも歳から言うといつ何時終焉を迎えるかも知れないと思いつつも、元気な父を誇りに思っていました。

その父が突然、手が震え出し倒れました。父本人は意識もしっかりとしており、長いことお世話になっているかかりつけのお医者様に連れて行きました。診断の結果は敗血症との事。お医者様いわく「まぁ歳だから電池切れやね。」いつも元気で活動的な父ですから、どこかでオーバーシュートしていたのでしょう。

抗生物質の投薬で徐々に回復していきましたが、本人は元気でお気楽な性格。少し回復したところで、ライフワークにしておりますスケッチ旅行に出かけました。いつも92歳ひとり旅ですが、さすがに今回は妹が付き添いました。そしてまた症状が悪化して、ふたたび毎日の病院通いが続いています。父らしいなぁと思う反面、とても心配な私です。病院に付き添うのですが、待合室には季節毎の絵画が飾られています。気がつくと紫陽花の絵に変わっていました。季節が進んだのね。と思うと同時に時が流れるのは止められ無いのねと、しみじみ思いました。

おかげ様で父の症状も安定しています。今秋には趣味の油絵の個展も催す予定です。それに向けての前向きな気持ちも、寛解に良い影響なのかも知れません。

いつまでも元気な父を見てきました。見た目も92歳には見えないので、終わり無き父を思っていた私です。が、時は流れるし、身体の電池も切れる現実を考えさせられました。

結構毒舌でざっくばらんなお医者様は「まぁいつ逝ってもあんたは大往生」

確かに充実した日々の老後を送っている父です。でももう少し一緒に過ごしたいと思う日々です。先日、父と一緒にビーフステーキを食べました。もりもりと食べる姿を見て(私よりもたくさん食べていました)これは百歳まで大丈夫かな(笑)




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